天気は快晴。絶好のバカンス日和だなぁ。 そう思って私は空を仰いだ。 私は今、船に揺られて南の島にバカンスに向かっている。 旅の友は親戚で1コ下のつぐみと、つぐみの友達の彩夏。 そして― 「多いね〜。」 「生徒だけで42人だって!」 中学テニスの選抜メンバーとか言う子たち。 正直中学は嘘なんじゃないかと思ってるのは内緒。 私たちは乗せてもらってるんだか何なんだか良く判らないけど、ともかく船長・つぐみパパの船だから乗っているんだそうだ。 さっき怪しいスーツのおじさんが色々言っていた事をそうまとめた。(少し違う気もするけど 何でも榊グループの人らしい? ますますテニスへの関連性が見えなかったが、一夜限りの付き合いだ。あまり掘り下げても仕方のない事だと思って考えない事にした。 おじさんたちと別れてから、若い二人は夕飯を食べながら誰がかっこいいだ何だとキャーキャーはしゃいでいる。(主に彩夏だ 船酔いしてお食事すら出来ない私は、酔いざましの為に飲み物を取りに二人から離れる。 歩いていると目に入るジャージは色の種類に富んでいて、きれいだなぁと思った。 オレンジジュースを片手に帰ってくると、彼女たちはテニスの人たち―青白のジャージだ―に話しかけられていた。 お互い2人ずつなのに私が入るのは気まずい。 まぁこんだけ男しか居なかったら女の子と喋りたいのも判らなくはない。これからの合宿でしばらく女子に会えない彼らにはラッキーだったのかもしれないな。 仕方なくどこかで時間を潰そうかと思案した矢先、 「――!?」 驚いた顔をして、こちらに向かって何か―名前だろうか―を叫ぶ少年と目が合った。 癖の有る黒髪に、勝ち気そうな目つき。加えて黄色いジャージ。 私の記憶の中に彼のような知り合いは居ないと思われ、あちらも人違いだと気付いたようだが、尚も近づいて来た。 「えと、…アンタ、誰?」 誰?は無いだろうとは思ったけど、酔いが酷く抵抗する気も起きないので抑える事にした。 「です。」 「あーそう。 ね、さん、暇?ちょっと喋ろーよ。」 私今めっちゃ船酔いしてるんだけどな。 ―まぁでも黙っているよりはマシかもしれない。 何よりも彼女らは青ジャージの子たちとそれなりに楽しそうに談笑している。 「いいよ」 結論を出しそれだけ答えると、彼は嬉しそうに話を始めた。 07811 戻 進