呆気なく崩れたのは不安。
背負ったのは嘘。



結局、私たちは次のよう振り分けられた。
つぐみは山、彩夏は海、腐っても年長者の私は臨機応変、という理不尽な形。
もうどうにでもなれと思って走り回った。




ロッジや調理場―生活する近辺の一通りの散策を終えると今日の仕事は終わりで、管理小屋と呼ばれる私たちの泊まるロッジに帰ってきた。
落ち着いてくると、頭が勝手に回り始める。

助けがくるのか、そう考えるとたまらなく怖くて、涙が止まらなかった。
地元に居る、愛すべき人たちを思うと、悲しくて苦しくてたまらない。
私はそんなに強くなれないと思った。
どうしてみんな、あんなに前向きなんだろう。
どうやって強くなればいい?どうしたらこの恐怖を忘れられるの?
つぐみよりマシだと、自分を守ればいいの?
そんなの違う。
そんなの酷すぎる。
でも、大変なんだから私は怖がってちゃいけないの?
一歩踏み出すのをためらっちゃいけないの?

―ねぇ、私は間違ってるの?





一晩中考えて、浅く眠っては悪夢に襲われ、そのたびにまた考えて…悪循環だ。
とにかく腫れぼったい目をこすって、顔を洗おうと思った。
多少は空が明るい。懐中電灯は持たずに行こう。
ベッドから出て、静かに戸を開け閉めして外に出た。



管理小屋の前の川にしゃがみこんでバシャと手をつけると、冷たさが伝わる。
2、3度顔にかけただけで目が冴えた。


冴えたけどする事も無い。散歩でもしよう。
そう思って立ち上がると、海側へ向かう。

海は穏やかで、あの時のように荒れ狂う姿が微塵も感じられない。
波の音に混じって潮のにおい、それに人の声。

…ん、声?

結構奥まった岩場から、確かに人の声がする。
不思議に思って近寄ってみた。
好奇心猫を殺すと言うか、聞くべきではなかったのかもしれないが、止められなかった。



070825