冷やかす事もしないし、触れる事もない。


「おはよ、丸井クン。」
「うわっ寒っ!何キャラだよお前!」
「え、普通じゃない?」


至極普通を演じていた。
昨日の出来事が何度も何度もリフレインして、笑えないくらいのはずなのに。

ああ、案外私の気持ちなんて大した事無いのかもしれない。


「ねぇ、幸村。キスしない?」

だから、自分を試した。
やっぱりあっさり言葉に出来た。

「いいけど。本気でするよ、俺。」

幸村はクイッと私の顎を持ち上げて艶やかに笑う。

「うわー、こわっ。やっぱブン太、しよ?」
「しよ?っじゃねェェェ!!何だそれは!キスなんてテメーの好きなヤツとしろよ!!」

横に居たブン太は、先ほどの幸村に対しての質問からずっと顔を赤くしていて、矛先が向くと更に色味を増してがなった。

「キスって、恋人としかしないものじゃ無くない?」
「無くねぇよ!」

ばっさりと切られて、胸が軋んだ。
他の人とキスなんて出来なかった。

くやしいかな、やっぱり好き、だ。



「…だよね。」

だけど、手の平で踊らされるのだけは真っ平だわ。

「彼にしてもらう。」
「そうしろ…っておまっ、オトコ居んの!?」
「むしろパパだったりして?」

ニヤッと笑う。
青ざめるブン太が面白くて、わーわー騒いでるのを放って教室を出た。





070811