よりにもよって、今会わせること無いじゃない。



「あ、におーくんバイバイ」
「…おぅ、お前さんか」


別に挨拶する義理なんて無いんだけど、彼からぶつけられる視線に負けてしまった。
だから口を開かずには居られなくて。

隣に居る女の子にガンと睨まれた。
昨日とは、違う子。


大丈夫、自然に笑えた。
あとは彼の横を、通り過ぎるだけ。



「待ちんしゃい。お前さん昨日どっか出かけとったか?」


まるで金縛りにあったみたいだ。
たった一言で私を動けなくさせた。

私の計算は、いつもアナタという未知数によって狂わされている。

「え?ああ、ちょっとね。」

もう一度同じ笑顔を張り付けながら、バレていたんだろうなと思う。

「学校の近く?」
「違うけど?」

射抜くような視線。
だけどこんなところで根負けするカワイ子ちゃんじゃ無いの。

「ふぅん、じゃ、そんだけ。じゃあな」
「サヨーナラ。」
「愛想くらい寄越せ。」


苦笑いしながら―だけど眼は笑ってない―軽口を叩く。

どうして?
一人くらい愛想が無くても構わないでしょう?


「欲張りね。」
「そんな事なかよ。愛想。」
「そんなに安くないの。」


自分の口から出た言葉は酷く冷たい響きを持って、彼に向かった。
もう何も返ってこないと判ったから、そのまま立ち去る。


このせめぎ合いに何の意味があるんだろう。
馬鹿らしくて、嫌になりそうだ。




070818